落語のごくらく

落語の台本を吹き出し💬式で書いています。

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昔は釣りが趣味ならバカ扱い!?骨を釣るため、竿を握る。落語【野ざらし】

 

 

昔は釣りというものはバカのするものと言われていたそうですな・・・    

 
 
魚買う銭がもったいねえからって、一日中釣れるか分からねえ魚を糸垂らしてぼ〜っと待ってるなんて料簡が知れねえや!
 

 

なんてんで、江戸っ子にはずいぶんと嫌われていたそうですな・・・  

 

中でも釣りをしている人の側で見ている人というのはもっとバカだと言われておりまして・・・  

 

別に見てたって自分の物になるわけでもないのに、ただず〜っと、じ〜っと見ている・・・

 

  釣りが好きな人というのは人がやっているのを見ているだけでも楽しいんだそうですけれども・・・    

 

 

 

 
 
 なんだい、はっつあんお前さんまた朝からずいぶんご立腹だねえ・・・
 
 冗談じゃねえぞ!先生!普段から硬派な面しやがって!
 
 わしは聖人じゃからは婦人は好かんよなんて言いやがってよぉ!
 昨夜の娘、あれ一体どっから引っ張ってきたんだい!いい女だったねぇ~
 
 年の頃なら十六、八かなぁ!
 
 なんだその十六、八とは・・・それを言うなら十六、七あるいは十七、八だよ・・・
 
 十六、八では七がない・・・
 質(しち)は先月流れたから・・・
 なんの話をしてるんだい・・・
 色が白いのを通り越して、ちょいと青みがかってたがね、いい女だったねぇ〜!
 一体どっから引っ張ってきたの!?先生!白状しなよ!
 わしにそんな覚えはないよ・・・お前は夢でも見たな?
 夢だぁ〜!?おう!後ろの壁見てみろ!後ろの壁!
 夢でもってあんな大きな穴が開くかってんだよぉ!
 なに!?壁に穴を開け・・・
 あぁ〜!いつの間にこのような!
 するとお前は昨夜のあれを御覧じたか!?
 御覧じたかぁ!?こちとら御覧じ過ぎたってんだ!昨夜は夜中にうたた寝よ!
 昨晩寒くてひょっと目が覚めるってと、先生のところでひそひそ声だ・・・
 はて先生はひとりもの・・・相手のいようはずがない、聞き耳立ててるってと女の声が聞こえてきましたよ?
 ますます聞き耳立てたよ?何話してるのか気になってガリガリガリガリ・・・
 あっしの道具はよく切れるよ!?商売道具の鑿(のみ)!さあ穴が開いて覗いてみるってと!
 相手の女はいい女だったねぇ・・・やい・・・どっから引っ張ってきたの?今の内なら罪は軽いよ?
 白状しなよ・・・
 はぁ・・・まあご覧になったとあれば仕方がない・・・隠さずお話をしよう・・・
 実はなはっつあん・・・昨夜の話をすると少し長くはなるが、あの娘というのは・・・こういうわけだ!
あ、そういうわけか! 
 まだ何にも言ってないよおい・・・お前もご存知のごとく、わしは釣り好き・・・
 いつものように釣竿を掲げ、向島へとやってきたが、昨日は魔日と言うのであろうか、雑魚一匹かからない・・・
 これは殺生をしてはならんという戒めと思い、わしも諦め、釣竿を巻きにかかる、浅草弁天山で打ち出す暮れ六つの鐘・・・
 陰に篭ってものすごくも!ご〜〜ん・・・ごぉ〜〜ん・・・
 ・・・
 や、やだなぁそういう話は・・・あっしはそういう話は好きじゃねえよ・・・いけねぇ鐘の音はいくらしたっていいんですけど、どうしてそう地べたの底から湧くような音がするんですか?
そういうんじゃなくてもっと派手にやって派手に!キンコンカンコ〜ン!パラパラパラパラぁ!ほわぁぁぁ〜ん!ってことになるってと話が派手でしょ?
 やですよそういうのは・・・あっしはね、見かけ弱そうでしょ?
 芯はもっと弱いの・・・勘弁してもらいたいよ・・・
四方の山々雪溶けて水かさ勝る大川の上げ潮がザブ〜リザブリ・・・岸辺を洗う水の音だ・・・ 
 いやぁ・・・
 辺りは薄暗くなってわしひとり・・・風もないのに林がかさかさ・・・かさかさ・・・
 と動いたかと思うと、中からすぅ〜!っとぉ!!
 で、出たぁ〜〜!!これは出たなぁ!わぁ〜!
 おい・・・ちょっと待ちなさい・・・
 いいえ!離してください!
離せないよ!離せないってんだよ! 
 今お前うわぁ!って驚いたのは良かったけれども、ここへ置いといた人の紙入れ(財布)懐に入れやがったな!?
 あっしが?先生の紙入れを?冗談言っちゃいけませんよ、いくらあっしがそそっかしいからったって人の財産を懐に入れてうちへ帰っちゃう、そういう人間とあっしは出来が違うの!
 あっしは正真正銘の江戸っ子だよ?人様のものを取ってうちに帰っちゃうなんて・・・
 ・・・
 これかなぁ?
 これかなぁじゃないよ!なんだって人の紙入れを・・・
 どうもすいません、あっしは驚くってと周りに落ちてるものを拾ってしまう質なんですよ!
 いやな質だねぇ・・・お前じゃないか?こないだ大家のところで驚いた拍子に柱時計懐に入れたってのは・・・
 えへへ・・・ど〜も・・・めんぼくない!
 めんぼくないじゃない!
 一体先生何が出たんです?
 カラスが一羽出た・・・
なんだおい・・・カラスかよぉ・・・脅かしちゃいけねぇや! そのカラスがどうかしたんですか?
 寝ぐらへ帰るカラスにしてはちと様子がおかしい、わしも物好き・・・その場へ行ってかたよせて見るってと・・・
 人骨野ざらし・・・生々しいドクロがあった・・・このような屍(かばね)を晒しているというのは不憫なもの・・・
 浮かぶこともできないとねんごろに回向(えこう)をしてやった・・・
 上手くはないが、手向けの句・・・月浮かぶ水に手向けの隅田川、生者必滅の会者定離・・・南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・
 飲み残りの酒があったからこれをかけてやると、気のせいかぽっと骨に明かりが差したように見えた・・・
 いやぁよく功徳をしたとそのままうちへ帰ってごろり横になる、さて何時であろうか、ほとほとと表を訪れるものがある・・・
 何者か問うてみると、かすかな声で・・・
 向島から参りました・・・
 さては!あれほど回向をしてやったのを仇に思い、狐狸妖怪の類でもってたぶらかしに参ったな!
 年はとっても腕に年はとらせぬつもり!尾形清十郎身に油断なく!
 長押の槍を小脇に抱え込み!つかつかつかつか!!
 ・・・
 どうも先生の話は威勢が良くていいんですが、先生今なんて言いました?
 長押の槍を小脇に抱え、つかつかつかつか?
 朝、昼、晩とこのうちに遊びに来てますがね?いっぺんだって長押の槍ってのを見たことがないんですがねぇ!
 槍がないからほうきを脇に抱え込み!
 なんだほうきかよぉおい!ほうきと槍じゃえらい違いだよ?第一そのつかつかつかつか!って、そんなにこの家ないんだよ・・・
 そうでしょ?間取りは俺のとこと同じだよ?つかつってともう裏へ抜けるぞ?
 こ、これはまあ物の例えだから黙ってお聞き・・・
 ガラリと戸を開ける・・・
 乱菊や狐にもせよこの姿・・・昨夜の娘が音もなくこれへす〜っと入ってきたと思いなよ、はっつあん・・・
 あたくしは向島に屍を晒しておりましたもの・・・あなたの功徳によりまして、今日これで浮かぶことができました・・・そのお礼に参じました・・・
 はるばる向島から来たのに素気無く帰すも何と無やら・・・足をさすらせ、肩を叩かせしているうちに、あの娘はそういうわけでこの世のもんじゃないんだよ!
え?この世のもんじゃないってことはあの世のもんですか・・・
 
いいじゃん・・・いい女だったなぁ、ああいう女だったらみっちり話がしてぇや・・・
 
その骨ってのはまだありますか?
 
わからぬ・・・
わからぬなんてそんな気取ったことを言ってぇ・・・教えろ、しみったれ・・・
 
しみったてるわけじゃない・・・
 
まああるのかもしれんな・・・
そうですか!それじゃあさっき言ってたでしょ?その骨が出る間抜けの句ってのを教えてください!
 
間抜けの句ではないよ、手向けの句だよ・・・
 
あぁそうそうそう・・・
 
月浮かぶ水に手向けの隅田川、生者必滅の・・・おいおい!何してる!人の竿をガラガラかき回してはいかんよ!
 
おい!それはわしが大事にしている竿だ!持っていくならこっちの竿を貸してやる!
 
てやんでい!借りてくよぉ〜!
 

いけないってのに、借り込むってと奴さん・・・  

 

途中で酒屋で三合の酒を算段して、やってきました向島・・・

 

 

 

 

 

 
 
 
 
な〜にを言ってやがんでい!年はとったが浮気はやまぬ!やまぬはずだよ先がない!なんてんでよぉ!しょうがねぇなぁあのジジイは!
 
先がねぇもんだからよぉ、釣りだ釣りだって女の骨ばかり釣ってやがんだから!
 
おやぁ〜〜!!また今日はずいぶん出てますねぇ!
こいつらみんな骨つってんのかぁ!?よせやい俺の釣る骨がなくなっちまうじゃねえか!

 
あれ?どうでもいいけど年寄りばっかりだなぁ!近頃の年寄りは色気付きやがったなぁ!
 
おぉ〜〜〜〜〜〜い!!!釣れるか〜〜〜〜〜〜い!!!
 
釣れるかよぉ!釣れるか骨骨ぅ!!
 
・・・はぁ?骨ぅ?
 
今お魚釣ってますよ?
 
なんだこの野郎隠そうったってそうはいかねえぞ!ネタはあがってんだネタは!
新造か年増か?どんな女釣ってんだよぉ〜〜!!
 
なんですかあの人は?土手のところで女のことばかり言ってますよ?
目の色が血走ってますよあれは・・・昨夜カミさんに逃げられたんじゃないんすか?
 
あのね〜!今みんなでお魚釣ってます!お魚釣ってますよぉ〜〜!
 
何をぉ!?お魚釣ってるぅ!?
 
てめえは魚釣る面か!?てめえなんざ首でもつれ〜〜〜!
 
何だありゃぁ?
俺も今そこへ行くぞぉ?
 
あぁ来るよぉ・・・これ悪いのと口きいちゃったねぇ、降りてきましたよ?
 
みなさん、気をつけてくださいね?
スチャラカチャンチャンスチャラカチャンっと~!どっこいしょのしょっと!
 
あたしゃ年増が好きなのよぉ〜♪ふ〜〜ん♪好きなのよぉ〜〜♪ん〜〜!!ん〜〜〜♪
 
・・・釣りしてるようじゃないねぇこの人は・・・湯に入ってるようだよ・・・
 
それもいいけど、この人餌つけてませんね・・・
 
あなた失礼ですがね、餌つけないってと、お魚は釣れませんよ?
何をぉ!?餌つけないとお魚は釣れませんん〜!?てやんでい!釣れっこもままっこもあるか!
 
こうしてりゃそのうち鐘がご〜んとなるだろ?林がガサガサっとなって、カラスがパッと出りゃこっちのもんだい!!
鐘が ボンとなりゃあさ~~♪上げ潮ぉ南さ~~♪カラスがパッと出りゃぁ!コラサノサっと♪骨(こつ)があ〜るぅさいさいさいっときやがったぁ!そらスチャラカチャンたらスチャラカチャンっと〜!
 
・・・すいません、せっかく今お魚寄ってきたんで、あなたがそこで騒ぐってと、せっかくの魚が逃げちゃいますんで、もう少しお静かにお願いします・・・
 
何をぉ!?俺が騒ぐと魚が逃げる!?
 
何を言ってんだい!魚に耳があんのかよぉ!!どこについてんだ魚に耳!今度見せろ馬鹿野郎!
そらスチャラカチャンたらスチャラカチャン♪
 
水かけ回したらダメだよぉ!水かけ回さないでください!
 
何だぁ!?俺がかき回してるってぇ!?おめえの国ではこういうのをかき回してるってるのかぁ!?
かき回すというのはこうやるんだぁ!!
 
・・・本当にやっちゃったよ・・・ダメです、今日はもう釣れません・・・もう面白いから見てましょ・・・
 
 昨夜先生のとこに来たのはちょいと年が若過ぎたね・・・やっぱり二十七、八、三十凸凹・・・乙な年増がいいね!
 
 やってきますよ?カランコロンカランコロンカランコロン!
 
 まあ〜!!私向島から来たのぉ〜!!
 おぉ〜!来たか!待ってんたんだ!こっちへ来ねえな!
 
お前さん、なんだろ?そばにもう女がいるんじゃないのかぁい? 
 
 俺?そんなもんはいやしねぇや!おめえのこと待ってんたんだ!
 そうかい?じゃあ私お前さんのそばへ行って座ってもよくって?
 
 いいから座ってくんねぇな・・・
 
そう?じゃあ座るわよぉ?
 
な〜んてなことを言ってな?
 
つつつつつ〜っと上がってきて、私の脇にペタっ!っと座って!
 
水ったまりに座っちゃったよぉ!あんまり頭の方がよろしくないんじゃないの?
お前さんなんだろぉ〜?私がまだ若いから構ってくれるんだろぉ?あたしがおばあさんになるってと、若い女と浮気をするんだろ、若い女とぉ・・・
 
しないよぉ・・・
するよぉ!

 
しないよぉ!
 
う〜ん、そんなうまいこと言ってさっ!後できっとあたしを騙すんだからさぁ!本当にお前が憎らしいぃ〜・・・お前の口が憎らしいぃ〜!
 
お前の口がぁ〜〜!憎らしいぃぃ〜〜!
 
痛い痛い痛い!!人のほっぺたつねるなよ!てめえひとりでやってろい!
えっへっへっへ・・・妬くなよ・・・
 
 妬きやしないよ!やだね、こいつぁ!
 
 だけどお前さん、お前さん浮気したらくすぐるよ?
 よせやい、くすぐると嫌なんだよ?
 
 そんなこと言わないで、ちょっとでいいからくすぐらせてちょうだいな・・・
 
 なんてんで、骨が優しい手を出して、私の脇の下のところを、こちょこちょこちょっとするから
 
 な〜にしてんのぉ、こちょがしたらくすぐったぁいじゃないのぉ、だぁめ〜!あっはっは!くすぐったいからやめろってのぉ〜!うはははっ!
 勘弁し・・・
 
 痛い・・・
 ・・・痛ぇぇ・・・
 
 あの人、魚釣らないで自分の鼻釣ってるよ・・・
どうしました〜?
すいませ〜ん・・・誰か取ってくださぁ〜い!
取ってくれってんだい畜生!みんなで手叩いて笑ってやがる・・・
 
そういう料簡かぁ?薄情なやつかい、てめえたちは!
 
痛ででで!!おぉ・・・痛ぇ・・・鼻から血出てきやがった・・・バカバカしくってはなちにならねえ・・・
この野郎こんなもんいらねえやい!
さあ来ぉいぃぃぃ!!
 
なんだあの人針取っちゃったよ〜!
 

  野ざらしという一席でございました・・・

 

 

 

 

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野ざらしを聞いて

 

野ざらしのオチは本当はこうではありません。

 

本当はまだ先があるのですが、ほとんどの落語家さんは今回のオチで終わります。

 

本当のオチを簡単に言うと、あの後、はっつあんは釣りを諦め、自力で骨を探し出します。

 

持っていた酒を全部かけた後、自分の住所を言い聞かせて、自分の家でワクワクドキドキして待っています。

 

この様子を、近くの川面に浮かぶ屋形船の中で聞いていた幇間の新朝(しんちょう)は、八五郎が普通の生きている女とデートの約束をしていると勘違いします。

 

新朝は仕事欲しさで八五郎宅に乗り込みます。

 

女の幽霊が来ると期待していた八五郎は、新朝を見て驚き、「誰だ」とたずねます。

 

新朝が「あたしゃ、シンチョウって幇間(タイコ)です。」

 

「何!?新町(=浅草新町)の太鼓!? ああ・・・あれは馬の骨だったか・・・」

 

がオチになります。

 

ドラマ・アニメ「昭和元禄落語心中」でも、助六の幼少期や小夏の幼少期に野ざらしを演じています。

 

 

 

野ざらしを聞きたい方へ

 

 

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