『空気を読む』『人に合わせる』『お客さんの雰囲気でサービスを変える』といったように、相手に合わせて行動する機会は人生生きていれば多いはずです。
中には『俺は自分の好きなように勝手に生きていく』という人もいるかもしれません。
しかし、残念ながら生きていれば必ず人との関わり合いは起こります。
そんな時に『空気が読めない人』なんて思われたら、自分の場所がなくなって嫌な感じがしますよね。
あなたは、あらゆる職業の中で『特に空気を読むのが上手い・気を遣うのが上手な職業』はなんだと思いますか?
おそらくタイトルから推測できると思いますが、そうです。
落語家さんは、気遣いが出来て空気の読める職業なんです!
なぜ落語家は空気が読めるのか?
(出典:『昭和元禄落語心中』 http://rakugo-shinju-anime.jp/#slide7 )
なぜ私が空気を読める職業が落語家さんなのか?という理由についてお伝えします。
まずはあなたは落語家にどんなイメージがありますか?
『落語は一人で行うもの』そう思っていませんか?
簡単に言うと、自身が修行で磨いた技術・話術さえあればどんなお客さんにも通用するのか?という話です。
落語家さんが座布団の所まで来て、落語をやります
↓
オチを言って落語が終わります。
↓
お辞儀をして、落語家さんが退場します。
確かにここまでお客さんに話しかけるわけでもなく、変な言い方をすれば『一人で勝手にしゃべっているだけ』です。
しかしながら、人前で話し切る話芸だからこそ、お客さんには最大の気遣いをしなければなりません。
相手のつまらなさそうな顔に気づきもせず一人で勝手に自分の話ばかりしている人と、最後のオチまで観客を楽しませる落語家との違いはそこです。
お客さんの今日の雰囲気に合わせてやるネタを変える
落語家さんは、『よし!今日はあのネタをやろう!』ということが基本的にはあまりないそうです。
落語のネタにもたくさん種類があり、
・粗忽者(アホが出てくる話)
・子供のにくたらしさが出る話
・女の憎らしい姿が出る話
・騙されて混乱する話
・お金儲けの話
・親子の喧嘩・競争の話
・ぞっとする怖い話
パッと思い浮かんだだけでもこれくらいあります。
その中からネタを選ぶ際には、今日のお客さんはどんな種類のネタで反応しているのかを見極め、『よし!このネタなら今日のお客さんは喜んでくれそうだな』と判断するのです。
一口に『お客さん』と言っても女性・男性、趣味嗜好、笑い方など人によって様々です。
そんなお客さんの集まりから、『今日は大体この雰囲気なんやな』と掴むことがなってくるのです。
あまりうまい例ではないですが、『今日のためにこのネタみっちり練習つんできたでぇ!』といういわゆる一発屋のようなお笑い芸人さんよりも、ネタも笑いをとりつつ、その後のバラエティで司会に急にふられた時に『このタイミングはボケるべきや、真面目なコメントをすべきや』と空気を読んで対応できる人の方がテレビ界では重宝されるようですね。
もちろん、空気を読みつつも、自分の武器・色はしっかりと出していく・・・
これがお笑い芸人にしろ、落語家にしろ、茶の間の皆様・寄席に足を運んでくれたお客様に届ける芸であるような気がします。
前座時代で空気を読む練習をさせられる
落語家さんには、前座という名の修業期間があります。
自分の師匠、他の師匠、兄弟子と同じ楽屋に入って雑用をこなすのです。
その雑用がまさに『空気を読む練習』となるのです。
例えば、雑用の一つに『お茶を出す』業務があります。
なんだ茶出すくらいなら俺だって私だってやっとるわい・・・
いえいえ、落語界のお茶出しは一味違うのです
『お茶』と言っても熱い・ぬるい、濃い・薄い、出して欲しいタイミングが師匠によって違うのです。
その師匠方の好みによってお茶の出し方を変えなければならないのです。
師匠師匠と言っていますが、毎回固定した師匠と仕事をするのではなく、毎回違う人になる可能性があります。
その時その都度、『あの人は熱いお茶が好きだから何℃くらいで』と兄弟子に教えてもらいます。
また真夏日の暑い日にいくら熱いお茶が好きだからといって熱い茶を出すのはナンセンス。
まずはぬるいお茶を出し、師匠の反応を見てから熱いお茶を出すなり、もっと冷たいお茶を出します。
他にも着物のたたみ方、着付けの仕方など覚えることがたくさんあります。
誰も前座制度に口出ししないのはなぜか?
全ての師匠の好みを把握して、その日の状況に応じて対応する。
そんな面倒な前座制度に対して、なぜ誰1人として文句を言う人はいないのでしょうか?
いえ、もちろん裏では愚痴をこぼしたり、文句を言ったりしている人もいるかもしれません。
あくまで公に言っている人がいないということです。
それは『楽屋の師匠を気持ちよく送り出せない野郎が客を気持ちよくさせられるか!?』という考えが源にあるからです。
会社でいう企業理念が『お客様を楽しませる』だとしたら、行動指針が『師匠を気持ちよくさせてから始まる』みたいなことですね。
この考えが落語界全体に広まっているから誰も文句を言わずに前座を修行として考えられるのです。
今日からできる空気の読み方講座
落語家さんの領域までとはいかないまでも、日常生活で意識できることはあります。
空気を読むことが最終的には人間関係を円滑にして自分がストレスフリーで生きやすくなります。
(1)出来るだけ相手の話を引き出すことに徹する
よく沈黙が嫌だからといって、自分が話をすることで盛り上げようとする人がいますが、大抵は無理をして話をするのでうまくいかないことが多いです。
つい思ってもないことを言ってしまったり、その場の雰囲気にそぐわないことを思わず口走ってしまうのは、その焦りからかもしれません。
ですので、できるだけ相手の話を引き出すことに撤してください。
やり方は簡単です。
例えば、
『~さんは好きな食べ物とかあるんですか?』
『私?私は~う~ん・・・基本なんでも食べるよ!』
ここで普通なら、『あぁ、そうなんですかぁ~・・・』
でまた沈黙するはずですが、そこも機転をきかせて
『え!?本当ですか?じゃあカエルとかも?ww』
みたいな感じでユーモアをまじえながら質問を広げていけばいいのではないかと思うのです。(これはの場合ですが)
別にいい話をしてやろうとか、頭がよさそうな話をしよう、笑いを生み出そうとしなくてもいいのです。
大切なのは、自分と相手の関係がゆる~く一緒にいて心地いいことです。
空気が読めないのは、天然でやってしまう人もいますが、自分の気持ちが先走ったり、空回りして起こることでもあります。
まずは相手が心地よく話してくれるような場づくりを作ってあげましょう。
落語で言うと、マクラ(演目に入る前の導入部分)です。
(2)しっかり考えてから言葉に出す
感情のままに自分の言葉を出すと場合によっては『自分勝手』と思われます。
これを言ったら相手はどう思うのかな?どこまでなら言葉にしても受け入れてくれるかな?と考えてから口にしましょう。
例えばですが、『分かりました』『大丈夫です』が口癖になっている人はよく物を考えていない証拠です。
なんでもかんでも『大丈夫です』と答える人より、『こことここが少し心配なのですがどうでしょう?』と疑問を投げかけてくれる人の方が安心できます。
これは個人的な見解ですが、空気が全く読めない人はどこか危なっかしい雰囲気を持っています。
いつ爆弾発言・行動をするか分からないと周りがそわそわしている中、自身は全くそのことに気が付いていないのですから。
言葉にするのは簡単ですが、それに振り回される人がいることも忘れないように。
(3)あえて聞く側に回って観察してみる
みんなはどういう話をしているのかな?と観察してみてもいいかもしれません。
私はつい最近まで人と話すことが苦手で、慣れない食事会や飲み会ではよく会話している人達の話を脇で聞いている役をしていました。
(そんな役はないか・・・)
正直何にも話をできない自分が何度も情けなくなりましたが、今思えばそれがなかったら、人の気持ちを考えながら会話できないかもしれないなと思います。
私の大好きな落語家、古今亭志ん朝さんはマクラで『私が芸をやってるじゃないんです・・・ここにいるお客さんが芸をやってるんです・・・そういう意味ではもし笑えない・つまらないなんてことがあったらそれは、お客様のせいなんです・・・』なんて冗談を言っていました。
いくら冗談と言えど、それほど、自分の芸と同じくらいお客様を大事にしているんですね。
まとめ
落語家が気を遣える・空気を読める職業だと言うことが少しでも伝わったでしょうか?
1人孤独に話す職業に見えても、その場の雰囲気・お客さんに合わせて、お客さんと一緒に作り上げていくものなんですね。
お客さんと1対1で丁寧に対応するキャバ嬢もホストも素晴らしいと思います。
また、お客さんの大体の雰囲気をふんわりと把握してギュッとお客さんの心をつかむ落語家さんもまた素晴らしいKY(空気の読める人)なのではないでしょうか?