ヨンスのひと笑い

落語によるひと笑いと普段感じている笑えないことを発信していきます

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落語【愛宕山】

昔は東京の方では山遊びと言うことはほとんどなかったそうですな・・

 

まあ山が上方の方へ行くってと迫っておりますから、昔っから菜種狩りですとかあるいは、松茸狩りなんというような遊びがたいへんさかんだったもんだそうで・・

 

京都へ参りまして、昼間あちこち見物をしてまいりまして、夜になるってと、祇園ですとかあるいは先斗町なんてところで芸子、舞妓を上げて、わっと騒ぐなんという実に贅沢なもんですが・・

 

こんな結構な遊びでもこれを五、六日続けるってとだんだん飽きてくるなんてことを伺いますが・・・

 
おい!どうだひとつみんな!!ん!明日はみんなで愛宕山へ行くか?
おっ!行くか!?よしっ!連れてこう!おい!お前達はどうする?豆菊も豆千代も行く?よしっ!五色豆達も連れて行こう!な?
おう!茂造!みんなの数を数えて女将にそう言って、弁当を頼みなさい、忘れるってと恨まれるぞ?いいか?
おう、一八・・今日はもう酒はよせ・・
へ?・・大将・・どうして?
どうしてじゃねえんだよ、明日山へ登るんだ!な?体に堪えるからもうやめておけ!
大丈夫、大丈夫ですよぉ!大将!何を言ってんだい、えぇ?・・・ごくごくっ・・・
あのねぇ!あたしはガキの時分からねぇ!身が軽い!もうつぅ~!っと高いところへ登るのが好きなんですよ!
明日大将驚きますよ?山なんざ朝飯前だから!
また始めやがった・・お前の体を心配してやめろと言ってんのに、そうしていちいち逆らうなぁ本当にお前は・・
飲め飲め飲め!好きなだけ飲め!!その代わりいいか?明日向こう行って勘弁してくださいって言ったって俺は許さねえぞ?いいな?
てっぺんまでどんなことしたって登らせるから!いいな?
俺ぁもう寝るぞ!!!
 

なんてんで、旦那は先に寝てしまう・・

あくる朝早く起きまして、大勢ぞろぞろぞろぞろ、共を連れてやってまいりまして・・

おい!一八!ちょっとこっち来い!
へ?なんです!
見ろ!えぇ!?あれがお前愛宕山だ!
ほぉほぉほぉ!あれが愛宕山ですか!!
へえへえへえ!左様ですか!
どうだ?高えだろ?
ええ!そうですねぇ・・ちょいと地べたが腫れてますなぁ・・
なに?・・本当に憎い奴だねお前はぁ!高いんだよ大変に!登れるか?
う~ん朝飯前でございますよ!
また始めやがった・・じゃあ先に登れ!
いや大将お先に・・
いいよ!お前が先に登れ!
いいんですよ!大将が先にすぅ~っと登ってください!それから女共がつぅ~・・・っと行きますから・・それであたしが殿(しんがり)を受け持って・・
逃げようったってそうはいかないぞ?いいか?
お~い!茂造!弁当はな、一八へ・・そうすると両手があくだろう?一八の傍へ付いて離れるんじゃねえぞ?どんなことがあっても上まで連れて来いよ?いいな?
一八を逃がすってと、お前さんもうちへおいておきませんよ?分かったね?うん・・よし、じゃあ先に行くからな?
おい!みんな!あたしの後をついてきな!いいかい?
あの一八さん・・お先ぃどす・・お先ぃどす・・・
(一八)はいはいどうぞどうぞ・・気を付けていきな!もし途中でね!足が痛くなったらねぇ!あたしを待ってなよ?おぶりもするし、抱きもするよ?・・・
ははぁ・・おぶりもするよ、抱きもするよと言ったけどもねえ・・・んなことはないねありゃあ・・茂さん!驚いたねぇ!えぇ?ひょいひょいひょいひょいっとあの女共てえのは、どうも・・・裾を軽くつまんだかと思うってと鮮やかなもんだなぁどうもなぁ・・
慣れてんだよ、う~ん・・・京都の女なんてのは始終山へ登ってんだ・・なぁ・・大丈夫だよ、女であんだけひょいひょいっと登れるんだから、男の俺たちにできないことはない・・・行こうじゃねえか・・
えぇ?冗談言っちゃいけねえってんだ、そんなもんに驚いてて始まるか・・さぁ、行こう
大丈夫ですか?
何を言ってんだ、心配するこたぁない・・ね?こんなものはね、歌でも歌いながら登っちゃえばいいんだ、調子つけて登るんだよ?
そうするってと登れるんだ・・・一生懸命登ろうとするから疲れるよ?軽くひょいひょいひょいと行こう・・
ツッチャラカチャン♪と・・ね?ツッチャラカチャン♪こういきゃあいいんだ!
山で白のさ~♪っと!ウサ~ギじゃないかさ~♪っと・・ウサギだ~べこりゃあさのさっ♪雪の塊さいさいさいっと♪
チャラカチャン♪ツッチャラカチャン♪・・・付いといでよ!大丈夫かい?調子よく登った方がいいよ?
こんなぁ~山なぁんざさぁ~♪朝~飯前よさぁ~♪踊り踊りなぁがら~こりゃさのさぁ~上に行くさいさいさい♪ほらっツッチャラカチャン♪ったらツッチャラカチャン♪~
踊ってやがらぁ、あんなところで・・
おい!一八!
はい!あっ!なんだ大将そんなとこにまだいんの?遅いねえ!早く行ってください!後がつかえますよ?
何を言ってやがんだい・・おめえの来るのをここで待って様子を見ててやったんだい!本当に・・
そんなに調子づいてるってとな?上まではもたねえぞ?
大丈夫ですよ!心配ありません、どうぞ先行ってください!
あとに続けよ?
へい!かしこまりましたぁ!
冗談じゃないよぉ・・ふぅ~でもちょいと暑くなったねぇ・・うん・・暑いやこりゃあなぁ・・あぁ~・・ふぅ~・・いやぁこれでいいんだよ?昨夜飲んだ酒がどんどん出てっちゃうって奴だ・・
よいしょっ・・はぁはぁ・・まちまち~♪蚊帳の外~♪っとくらぁ・・なぁ・・七~つの鐘が~なるまでもぉ~♪七~つの鐘がなる~までもぅ~♪・・・こちゃへ~こちゃへ~♪・・へぇ・・ふぅ・・暑いねぇどうも・・暑くなってきた・・・
チャ・・・はぁ・・よいしょっ・・ほっ・・ほぉ・・ふんふん・・はぁはぁ・・はぁはぁはぁ・・ん~♪んん~♪んっと~♪・・へぇ・・ひぃ・・はぁ・・はぁ・・
軽くぅ・・軽く軽くぅ・・ぅぅ・・はぁ・・
重そうですねぇ、大丈夫ですか?
・・うるさいねぇ・・あぁ・・まだかなりあるかい?
とば口(入口)ですよ
え・・とば口?あぁ・・はぁ・・あのね、茂さん悪いけれどもね・・ちょいと上行って・・大将に!『一八はふもとでお待ちうけしております』ってそう言ってきておくれ!
だめですよぉ!何言ってるんですか!あなたあれだけ大見栄を切ったんですから!ね?上まで行きましょうよ!あたしだってあんた連れて行かないとしくじっちゃうんだから!
大丈夫大丈夫!あたしがね?後ろから押しますよ!
・・押してくれんの?本当に?・・・じゃあ頼もうかな・・
よし・・どこんところ?腰の所?あっそう?じゃあ頼むよ?
あぁ!ちょっとちょっと腰掛けちゃだめですよ腰掛けちゃ!!あんたずるいよ?すっかりあたしに任しちゃいけないですよ?歩くのだけは自分で歩いて下さい?
いいですか?押しますよ?足を前に出してくださいよ?いいっすか?
よいっしょっと!!そらぁ!よいしょっ!よいしょっ、そらそっ!よいしょ!よいしょ!よいしょ!
どうですか?ほら・・ね?ふふっ!よいしょっ!よいしょっ!よいしょっ!よいしょっ!
あぁ!こりゃあいいや!こりゃあ楽だぁ~あっはっは~!これだったらいくらでも山登れますよ?ねぇ?後ろから押していただくのはすまないねぇ・・茂さん!帰ったらまたお礼するよ?
あのね、旦那にもよくそう言っておくよ?よく働きますよってんで口聞いておきますよ?人間と言うものはねぇ、大変なんだよ?信用がつくと言う事はね、私が言えばまたね?大将なるものはあぁそうかい?よしっ!って言ってくれんだ!私をだから敵に回すってとね、本当に損するよ?いいね?本当だよ?
うん、あぁありがたいねぇどうもこりゃあ・・
痛っ!!あぁ・・!!あぁ!痛いねぇ!
どうかしましたか?
どうかしましたかじゃないよおい・・本当のところを言うと、俺はお灸をすえたんだよ・・跡がまだ治ってないんだよ・・そこんところをがぁ〜っと押すとかさぶたがずれちゃった・・あぁ痛い・・・分かんないかねぇ!?
着物の上からじゃ分かりませんよ・・
見当をつけりゃいいじゃねぇか!どの辺にお灸をすえるかっていうのを!勉強がたらないんだよ勉強が!
(大将)あんなところで喧嘩をしてやがんだ・・・おーい早くこっちへ上がって来いよ!
へい!あぁ・・大将が呼んでるよ?
はぁ・・いやぁどうも・・・どうも大変お待たせをいたしました・・えぇ・・
どうだ?
どうだったって大将の前ですけどね?あっしはねぇ?ひょいっと見た時はね?それほど高いとは思いませんでした・・こうして登ってくるってと、てっぺんまではずいぶんありましたなぁ・・・
この野郎・・てっぺんだって言ってやがらぁ・・これはてっぺんじゃないよ、中腹だ! 見ろ!あそこがてっぺんだ!
へ?あら・・あそこはあのお隣のお山じゃないんですか?あ、続き?へぇ・・・
朝飯前か?
いえ昼飯過ぎです・・
なにを言ってんだよ・・
茂造!みんな茶店でもって待ってるよ?えぇ?弁当配ってやりな!?みんな腹空かしてんだ!
一八!お前はいい・・お前はあたしに逆らった罰だ・・ちょっとこっちへ来いな?えぇ?あれを見ろ!
へい・・あぁ・・ようがすねぇ・・これだ疲れがすーっと取れちゃうほど見晴らしが良い・・京都ってところはねす~っと青いものがたくさんあってね、それで寺がたくさんありますからね?それで川がたくさん流れています・・絵になるね!大将!こういうところにいたら長生きできるんでしょうなぁ・・・
どうも大将?あそこに輪のようなものがありますがねぇ・・あれは何です?
やっと気がついたか? あれはかわらけ投げの的だ・・
 
 
 
ほぉ・・かわらけ投げっていいますと?
知らねえだろ?俺が今見せてやる・・・
茶店のお茶店のおばあさん?ちょいとかわらけを10枚ばかり!ありがとありがと・・
今俺がこれをすっと投げるってとつぅ〜と行くんだよ?早い話が的に当たるんだ
ブッ!・・・すぅ〜・・・・・

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かわらけ投げ

 

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かわらけ 大将は端をかじって取り、飛びやすくした



どうだ輪を抜けたろう?
ほうほう・・抜けましたなぁ・・・
だろう?驚くんじゃねぇぞこんなことで・・・プッ!まだ今度は上からな、上の縁の下あたりをすーっと抜けていくぞ?
それ・・・すぅ〜・・・
ほらどうだ?今度は2枚いっぺんにプッ!プッ!通ってからすっと2手に別れるぞ~?
それ・・・ほら、どうだい?別れたろう?
なるほど、面白そうですなぁ・・へぇ・・1つ私にも・・
お前にできるか?
えぇ!朝飯前ですよ?
始まりやがったなぁ?このやろう・・・やってみろ
やりますよ?怒っちゃいけないよあなた・・・えぇ?あそこを通せばいいんでしょう?ねぇ?流儀が違いますよそれはね?一八流なんですからこっちは・・・
一八流だからね・・大将はこっちから投げたでしょ? あっしはこっちからいっちゃうんだ・・ ね?いいですか?こっちの方が遠くに飛ぶんですから・・・
 
よ~いしょっと・・・・
・・・・
かわらけが的から大きく外れるだなぁこれが・・
やっぱりこっちですかなぁ・・・じゃあちょいとね?形をとって・・・いくぞ!
それ!
あ~っと・・・大将ねぇ・・大将が投げるとこうふわ〜っと行くんですよあっしがやるとこう震えてきますなぁそして途中からすーっと下に落ちちゃうどうしてでしょうなぁ?
端を欠いてないからだよ?
あぁ・・・そういうことですか!そういうのは早く教えてくださいよぉ!
ブッ!ペッ!ペッ!不味いもんですなぁこれは・・
これでいけますか?そうですかねぇ・・こういう風にしたら空を切るのかなぁ・・・
それ!・・・あー!あはは!本当だいったいった!もうちょっとじゃないかい?
こうなりゃあたしだってね・・それぇ~!
あ!今のは惜しいね・・・惜しい!
ブッ!それぇ!つぅ〜っと!あ〜っと!
 
あ~外れた
なにをやってるんだよ本当に・・・まるでお前当たんねぇじゃねぇか・・・お前なんかになむやみやたらにできてたまるかかわらけ投げの会があるくらいなもんだ・・
うまい人になるとな?ここからあそこまで塩せんべいをつぅっと投げて当てるってなもんだからな・・・いや実に驚くよ、あんな軽いもんでよくそんだけの見当がつくと思って感心すらぁなぁ・・
おい一八・・・見ろ
え?なんですかそれは?小判? 本物?えぇ!?何枚あるんですか?
30枚!?へぇ・・・へへへ・・どうも・・どうするんですかそれ?
これをな?すぅっと・・・あそこへ、俺は前から考えていたんだ、重いもんの方が見当つきやすいと思ってなぁ・・・いちどやってみたくてしょうがなかったんだ、これからお前に見せるからいいか?よく見てろ?
それであそこへ放っちゃうの?投げちゃうの?
それはよしましょうよ大将・・何を言ってるんだあなた・・もったいないよ?
生意気なことを言うなよ!?無駄だと!?無駄だと言えばお前なんかをこんなところに連れてきて遊びに来てる方がよっぽど無駄だよ?
えぇ?人間と言うものは無駄をしてんだ・・無駄がしたいために一生懸命普段苦労するんだ・・・てめえなんざにわかってたまるか!よく見てろ・・・
それぇっ!・・っと・・ほほぉ・・妙になってるなぁ・・えぇ・・これは力が足りないかなぁ・・それっ!あぁ・・速いのは速いんだがねぇ・・が定まらないな、これは軽くやって届かねぇ・・・
おっ、長いやつだ・・この端のところを持って・・・よっ!・・これだこれだ!すーっ・・もうちょいとだな・・あぁ惜しいなぁもう少し稽古すれば何とかなる・・
ちょいと今すぐってとな、それはちょいと無理かもしれねぇ・・・(小判を次々に輪に向かって投げる)
あ、ちょいと・・ちょいとあの・・あのねぇ!大将!?本当にあなたもったいないよ?よしなさいあんなところに放るのは!
こっちへ投げなさいこっちへ!こっちへ投げてくださいよ!私が手をあげて輪になっちゃいますから!こういう風に!ね?大将!
黙ってろてめえは!見てろよ!?今そのうちに俺が当ててみせるから・・
あそこを通らねえもんかなぁ!そぉ〜れぇ〜!そぉ〜れぇー!
あっちょっと大将!やめてください!
うるせえ!おめえは触るんじゃねえ!よいしょっ!このっ!それっ!そぉれぇ〜!
ふぅ・・あぁ〜・・ダメだな〜・・
・・あ、あのねぇ・・大将そんなことはどうでもいいんです・・あそこに小判落ちてますけど、あれどうするんです?
あのまんまだ
人に拾われますよ?
拾った人のもんだよ・・
じゃあ・・あのぉ・・仮に・・あたくしが拾ったら?
貴様のもんだよ
あぁそうっすか・・へへっ!これだ!ざまぁみやがれ・・いただきますよ?
やるよ!
ありがとうございます!へへっ!
ちょいと茶店のおばあさん?これどっから降りるの?え?降りるところがないの?
だってあれを誰かが最初は付けたんでしょ?え?あぁ!回り道をしたのね・・
 
どっちからいくの?あっこっちから?行けないことはない?そうかそうか!どのくらいあるの?
四里と二十八町(約18㎞)?
あるかもしれねぇなぁ・・・はるか向こうだからねぇ・・山道で四里と二十八町・・これは困るねぇ・・
行かれないことはないね?ん?狼が出る?
・・・出そうだねぇこれはぁ・・・狼とは付き合いたくないねぇ・・でも三十両が・・・でもこんな谷底じゃあ・・なんとかねぇ・・
あっ!これだ!よし・・こうして・・ちょいとおばあさん?この傘借りるよ?え?何?紅葉屋?あっ本当だ紅葉屋と書いてある・・
まあまあいいじゃないか!借り物だって大丈夫だよ!あたしがね、もっといいのを後でたくさん買ってあげるから!
旦那?それじゃあひとつあたしが・・
ん・・どうすんの?・・それを持って?降りるのかいお前!
おいみんな弁当ちょっとやめなさい!みんなこっちへおいで!
これから余興が始まらぁ!滅多に見られないよ?こっちおいでこっちおいで・・
ささっ、おい、客は集まったよ?早くやんな早くなんな・・
えぇやりますやります・・これをね、ひのふのみでひゅっと飛びますから!驚くなよ!?みんな!
ひ〜のふ〜のみ〜っ・・・
 
・・・ふぅ・・下がまたなんだか分かんねえんだからなぁ・・竹がこう鬱蒼としてるとねぇ・・なんかこう・・・
うぅん・・大丈夫です!今行きますから!ええ!
ひの・・ふの・・みの・・よの・・ごの・・ろ
いくつまで数えんだよ!
分かってますよぉ・・踏ん切りがつけばいいんです・・人間というものは踏ん切りがつくまで大変なんです・・なんとかひとつすっと・・
目を瞑ればいいんです・・いいですか?目をつぶって飛んじゃうんだ
・・ひの・・ふの・・みっと・・・
開きますな・・あぁ・・なんとかねぇ・・くやしいなどうもなぁ・・う〜ん・・
そうだ!ちょっとみんなそこどいてどいて!危ないよ!そこにいると!今ここから駆け出してって弾みをつけてぽ〜んと飛ぶから!道連れにならないように脇ちょっと避けて避けて!大将!ちょっと危ないですよ?傘になんか引っ掛かるってとこれまた困っちゃうんだ・・
いくぞ!ほっ!とっとっとっとっ!だぁ!いやぁ!はぁ!・・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・
気持ちは行きたいんだけどねぇ・・体がねぇ・・体が止まるんだよ・・悔しいなどうもなぁ!なんとかひとつ、ちょいときっかけがつけばいいんだがなぁ・・
おい・・茂造・・ちょっとこっちおいで・・
今あそこでな?一八がきっかけがつかねぇきっかけがつかねぇって困ってるから、ちょいとお前行ってな、ひとつ・・とんっと・・後ろからきっかけつけてやんな・・・
んな、それはいけませんよ!旦那!
いいんだよぉ〜!傘持ってんだから大丈夫!おいほら行けってんだ!
わっちょっと待ってくださいよ!いいんですか?それじゃあ・・
 

なんてんで乱暴なやつがありまして、崖っぷちでもって傘持って震えてるところを後ろからいきなりぽ〜んとついたもんですから、きっかけがついたなんてもんじゃない! あぁーーー!ってと笹竹にひっかかりながらガサガサザザァーガザガザザザァー!

あぁ〜・・・だ、旦那・・やっちゃった・・下へ!
分かってる分かってる、見てたからな・・大丈夫大丈夫!いまさらそんなこと言ったってやったものはもう今から取り返しがつかねえんだから!ね?
もうどっかへ見えなくなっちゃった・・呼んでみようか・・
おーーい!一八〜〜!
(茂造)一八さぁーーーん!一八さーーん!おーーーい!
畜生・・ひでえことをしやがる・・後ろから突き落としやがって・・俺ぁ傘持ってきてたからいいようなもんの・・・
はっ!降りられたんだ!降りられた降りられた!どこで声がするのかな?あぁ見える見える!
ちょいと〜!大将ーー!ここですよぉーー!
あぉ!出てきた出てきた!
おぉーーーい!怪我はないかーーーい!
怪我はありませんよーーーー!
金はあるかーーーーい!
か・・あっそうだそうだそれで降りてきたんだ!
え~っとあそこから放ったから・・あそこらへんの見当だ!
あっ!あったあった!ありがたてえありがてえ!ほら!やったやった! あらぁ大将もうまいねぇ、同じ見当で投げてますよ・・嬉しいじゃねぇか!
あぁこんなところにも!へへっ色が山吹色だから探しやすいんだよ?ほらほらここにも・・えへへ・・人間というものはね?いつ困難に出くわすかわからないけれどもね、またそうばかりは言ってられないんだよ?こういう運が向いてくるっていうこともあるんだから・・
 
ほらほら・・ねっ?これだってなんだって日頃の心掛けのおかげだよ? 虚空蔵菩薩のおかげです!一生懸命朝晩と信心をしているおかげでもってね、ここにもほらほら!大将うまいね、同じ見当でもって放ってくるってことは・・
みんな言うんだよ?若いのに新人ってのはおかしいって・・そんなことはないんだよ?一生懸命手を合わせて拝んでんだぞ?こっちは!
ひとひとひと・・ふたふたふた・・みちょみちょみちょ・・
まだあるまだある!まだありますよ?ほぉら!ここにもあった!飛びすぎたんだ!めでたいねぇ!こんなとこにも!ふふふ・・
んん〜〜♪・・あれ?二枚たりませんよ?せっかく降りたんだから三十枚全部集めねぇと・・
あっ!こんなとこに隠れてたってだめだ!こん畜生!ははは!こんなとこに引っかかってやがって、かると思ったってそうはいかねぇぞ?ほらぁ!
えぇっと・・よし!
大将ーーーー!三十両ありましたよーーーー!
貴様にやるぞーーーー!
ありがとうございますーーー!!
どうやってあがるーーー!?
あ・・・・あぁぁぁぁぁーーーーーー!!!
欲張りーーー!狼に食われて死んじまえーーー!先に帰るぞぉーーー!
ちょっと!大将待っておくんなさい!それぁあなた薄情ですよ!おい茂さん止めておくれよ!みんなも止めておいてよ?
うぅ〜ん・・・
 

なんてんで奴さんももうなんだか知らないが唸っておりましたら、しばらくするってと何を思ったか、着ているものを全て脱いじゃった・・・

芸人のことでございますから、安物ではございますが、絹物ですな・・・羽織から長襦袢、着物!こいつをぴ〜ぴ〜っと割きはじめた・・

はぁ・・ご覧よ・・気が狂っちゃったんだよ・・着物を割いてるよ・・
はぁ・・人間というのはどんなことでどう変わるか分からないってのはこれだねぇ・・
おい・・・そうじゃないよ!?縄をないはじめたよ?いろんな芸のあるやつだねあいつは!
おぉーーーい!大変なところで内職が始まりましたなぁーーー!
しょうがねぇ・・・こんなところで内職なんざしたくはないよ?したくはないけれども狼が出ることについちゃあね、これはいけませんよ・・
狼ってのはよいしょが効かねえからな・・
ちょっと待ってくださいよ!今すぐでございますから!
 

ってんで無我夢中で長~い縄を一本こしらえるってと、手頃の石を取ってきまして、突先につけて、あっちこっちと見ているうちに 際立ってすぅーっと長い笹竹があったもんで、そこに検討をつけたもんですから、ぴゅっと投げるってと、こつーんっと当たってくるくるっと・・

よーし!よいしょぉっ!くっ!よいしょっと!おーいっしょっと!
もうちょっとだぁ!いやぁ!こうなりゃもう楽なんだ!いやぁ!この辺から〜♪いよ〜♪よいしょっ!ん〜♪あらよっ!よっ!よっ!いーやっ!あぁー!
 

ってなんで、あらん限りで無我夢中ですな・・・竹がまるで満月のようにぐぅっと!しなりまして、傍の岩壁に足をかけてぽーんっと弾みをつけるってと、

つっ・・つっ・・つっつっつつつつつ!

 

ただいま戻りましたぁ!

上がってきやがったよぉ!貴様はすごいやつだ!生涯ひいきにするぞ!
ありがとうございます!
金はどうした!?
あぁ!忘れてきた・・・
 
 
 
終わり
 
 
 
 
愛宕山を聞きたい方へ】

 

 

落語名人会 3

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