僕らと映画と落語と

どこにでもいる普通の大学生が普通から脱却するため、ブログ始めました。片方は映画、もう片方は落語についての記事を書きます!

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落語【子別れ上・下】part3

 

どう?すぐにはちょいとかかれないだろう?

いえ!そんなことはありません、いつお話があるんだろうと思って待ってたぐらいでね?
いや他にも請け負ってる仕事はありますが、日切りの仕事の仕事はありませんからね?まあ代わり入れたり案文しながらとりかかりますから心配ありませんよ
そうですねぇ・・・まあ四、五日待っていただけましたらなんとかかかれると思います
うかい、そりゃあよかった・・それじゃあね、早速なんだけれどもあたしもこれからちょいと忙しくなるんでね?今のうちに木口を見てもらいたいんだ、これからどう?ちょいと木場まで付き合ってもらえるかい?
ええ!よろしゅうございますよ?ちょっとお待ちを願います!
あの!おばあさん!?今これからねぇ!お店の番頭さんと木場に行ってきますからすいませんが留守をお願いします!水屋が来ましたら、水汲みこんでもらって、御あしは水瓶の蓋の上に乗っけてありますから!すいません宜しくお願いします!
へえどうも・・お待ちどう様でございます!
大変だねぇ・・出掛けるとなると人に色んなことを頼んで・・
そうなんですよぉ・・もう若い時分はね?1人の方が面倒でなくていいと思ってたんですが、この年になるってと1人ってのは何から何までてめえでやんなきゃなんないんで、厄介でしょうがありませんよ・・
仕方がないよ・・お前さんが勝手にそうしたんだから・・
ええ、まあそれを言われるってとね・・へっへっへっへ・・面目なくて穴があったら入りてえぐらいなもんですよ・・
そうだろうなぁ・・まあ本当にあんな馬鹿なことをしちゃってね・・お前さんの料簡じゃないよ・・がそうしたんだろうとは思うけれども今日こうやって酒をやめて仕事に精を出してるもっと早くにそういうことをしていればこんなことにはならなかった・・・
まあまあ今そんなこと言ったってもう手遅れだからしょうがないんだけどもさ・・う~ん・・何年になる?
えぇ・・三年になりますねぇ・・
三年かぁ・・はぁ~ん・・うん・・思い出すだろう?
え?何でございます?
だからさぁ・・おかみさんのことを思い出すだろってんだよ
あぁ~!そうですねぇ・・えっへへ・・まあ何かにつけてねぇ、まああっしはちっとも銭を入れねえのによくやりくりしてくれてたと思いますよ・・
本当だよぉ、もう~働きづめに働いてさぁ!えぇ!?それでもって亭主思いだろう?子供のこともよ~く思ってる、で、器量よしで愛想がいいってんだから、本当にお前さんいいおかみさんだよぉ・・
会いたいだろう・・
え?
会いたいだろう?
え・・えぇ・・まあ!会いたくねえってと嘘になりますねぇ・・
ただ番頭さんの前ですがねぇ・・まあそれはかみさんには会いたいのは会いたいんですが、近頃ねえ・・無性にそのぉ・・
ガキの面が拝みたくってねぇ・・
あぁ~・・亀ちゃんねぇ・・可愛い子だったぁ・・いくつになる?
えぇ~あれから三年ですから・・七つでございますよ
可愛い盛りだぁ・・ねぇ!
へぇ、表歩いててねぇ!同じぐれえの年頃の子供見つけるってとことによるってと、亀じゃねえかな?あいつは亀じゃねえかな?ってんで、そのたんびにドキドキハラハラして・・だらしのねえことでございますよ・・
こないだもね?饅頭屋の前を通りかかったら、蒸籠からふわぁ~っと湯気が立ってるです・・あぁ、そういえばあいつはこの饅頭が好きだった・・もし今家にいるんだったら買って帰ってやったらどんな面して喜ぶだろうと思ったらそれだけで涙が出てきやした・・
そしたら饅頭屋の親父がね?あっしのことをじ~っと見て、『この人は饅頭を見て涙をこぼしてるが、ことによるってと清正公様の申し子かもしれねえ・・』なんてこんなこと言ってましたよぉ!
うまいことを言うねぇ・・二人はどこにいるのか分からないのかい?
ええ、どこにいるんですかねぇ・・まるで分かんないんですよ・・いやぁこっちもね、自分から探そうとはしないもんですから・・
ほ~う、それはどうしてだい?
いや忙しかったってこともあるんですが、それよりねぇ・・もしいるところが分かってこっちが訪ねて言ったときに、ねぇ・・
ご亭主がいたら、引っ込みがつきませんでしょ?そんなことが嫌だったもんですから、こっちからは探さなかったんですよ・・
ただたまにねぇ、みんなに会ったら教えとくれよ、なんてなことは頼んではいたんでございますけれども・・
なるほどなぁ・・そういう心配ってのもあるかもしれないねぇ・・だけどね?居所が知れてさ、色々と聞いてみておかみさんと亀ちゃんとふた~りっきりってことが分かったら、また及ばずながらあたしが間に入ってなんとかするよ
へえ、どうもありがとうございます・・その時はひとつ宜しくお願い致します・・
しかしねぇ・・あの酒がよくよせたもんだよぉ・・よせるもんじゃないよぉ普通は・・つらかったろ?
えぇ、これがねぇ・・ちっともつらくねえんですよ・・
だってあれだけ好きな酒だよぉ!?つらくないわけがな・・
いえそれがつらくなかったんですよ!
まあ番頭さんの前ですけれどもねぇ・・まああんときご存知の通り、仲のめかけの女が家を出て行っちゃって、1人になっちゃったときに初めてね、なんて馬鹿なことをしたんだろうと思ってあっしはてめえでてめえに腹が立ったんですよ・・
その時分はなにかあるってとすぐに酒だ!ぱぁ~っと駆け出して、それで酒屋へ飛び出して、枡かなんかできゅ~っとやろうと思ったら、口まで持ってきたときにいやにその時に限って、酒の匂いがぷ~んとしてきたんですよ・・
あぁ!そうだ!こいつを飲んでたがためにあんなことをしちゃったんだ!もうこれはぁ飲めねえ!って思ったらそっからもう手が動かねえんですよ・・
そのまんまそこへおいて、あっしはすぅっと出てきたんです・・それからひとったらしも酒は飲んでませんよ・・だから苦労もなんもなしに酒はやめられたんだ・・
ほぉ、そうかい・・そういうこともあるのかなぁ・・まあそれは結構なことだねぇ!
ん?・・・おい・・・親方・・こんなことってのはあるのかねぇ・・噂をすればってのはこのことかい・・・
あそこにいるのは亀ちゃんじゃないかい?
へ?か、か、亀?ど、どこでございます?
ほら!あそこだよ!あそこ!子供が三人遊んでんだろ?二人座ってる・・しゃがんでるだろう?1人が立ってる子がいてなんか言ってるじゃないか!!
あの子亀ちゃんによく似てるけど違うかい
へ?ど、どこ・・・
はぁ・・そうです・・間違いなく!あれは亀です!
そうだろう!?
えぇ!・・こんなところにいたぁ・・いたぁ・・動いてますよ?
当たり前だよ!動いてなきゃ困るんだ!なぁ、ちょいと行って話をしておいで・・話をしておいでよ!
これから木場へ・・
いいよぉ!!行き先は分かってるんだから!あたしはまたぶらぶら行くから!ちょいと話をしておいで!長いことは困るよ?また改めて会えばいいんだから・・すぐに後追っかけてくれりゃあいいんだから
そ、そうですか・・へい分かりました、じゃあすぐに!ありがとうございます!すぐに!へいどうも!
はぁ・・いたよこんなところに・・
おう!亀!・・・亀!
へ?・・あっ・・・おっ、おとっつあん・・・だな?
おう!分かるか?
・・分かるよ・・うっ・・うぅぅ・・
なんでぇ・・泣くこたぁねえじゃねえか・・
おう坊や達すまねえけれどもなぁ・・おじさんちょっと亀ちゃんと話してぇことがあるんだ・・また明日遊んでおくれ?
いやぁ!別に怪しい者じゃねえ、大丈夫だよ、おじさん亀ちゃんとはごく親しい間柄なんだ、心配するこたぁねぇ・・
すまねぇなぁ!あばよ!
おう、こっち来いよ、こっちへ来ねぇ・・なにはにかんでやがんでぃ・・
しばらくだったなぁ・・なぁ!
・・ぐすっ・・・うん・・
しばらく会わねえうちに大層大きくなった・・
おとっつあんも大きくなったねぇ・・
何言ってやがんでい・・大人に言うこっちゃねぇ・・色は真っ黒になって丈夫そうでなによりだ・・
なんだおめえこの辺りにいるのか?
・・そうだよ・・ここずっといってねぇ、あの乾物屋さんと八百屋さんの間へ入った裏にいるんだよ・・長屋のね?突き当りの掃き溜めのすぐ脇にいんの・・
ハサミムシみてえだなぁ・・そうかぁ・・達者でなによりだ・・
おっかさんどうだ?達者か?・・おおそうか・・そらよかった・・
で・・可愛がってくれるか?
へ?
可愛がってくれるかよぉ!
・・誰が?おっかさんが?
おっかさんが可愛がってくれんのは当たり前じゃねえか・・そうじゃねえよぉ・・
おとっつあんだよ・・
お、おとっつあんってのは・・おとっつあんおめえじゃねえか・・
あぁ・・俺ぁ先のおとっつあんだよ・・後から来たおとっつあん、いるんだろう?
そんな分かんねえ話はないよ~子供が先で出来て親が後から出来るなんて・・八つ頭じゃあねえやな!
なにをいってんだい・・あいかわらずおめえは口が達者だなぁ・・そうかぁ・・じゃあ何か?
おっかさんとおめえと二人っきりか?
・・・へぇ・・そうか・・うん・・おっかさんなんか仕事してんのか?
うん・・よそのお家から頼まれてお着物縫ってるの・・
ああ・・そうか・・おっかさんは針持ってたからな、なんでもうまくできるんだ!・・そうかそうか・・それでおめえは学校行ってんのか?
うん・・行ってんだよ・・行かなくてもいいよって行ったんだけれどもね?おっかさんがこれからは世の中は違うんだ、例えどんな商売でも読み書きは出来なきゃいけないんだって・・
お前のおとっつあんという人は職人としては腕は立派だったし、応対も立派だったし、とてもいい職人だったけれども、惜しいかな明き盲(あきめくら)だったって・・おとっつあん明き盲なんだってねぇ・・
あたいがここにいたのが良く見えたねぇ・・
何を言ってやがんでい・・・そういうこっちゃねえんだよ・・まあおっかさんの言う通りだ、これからはどんな商売だってちゃあんと読み書きが出来なきゃしょうがねえ・・おとっつあんはそれで困ってんだ・・
苦しい中でおめえを学校にやってんだ・・おめえはちゃんと勉強しなくちゃいけねえぞ?なっ?
・・それでおっかさん、おとっつあんのことなんか言ってたか?
うん!のべつ言ってるよ!あの飲んだくれには手ぇ焼いたって・・
そうかぁ・・ひでえこと言われんなぁ・・もっともしょうがねえや、あの時分にはおとっつあん酒ばっかり飲んでおっかさん困らせてたからなぁ・・
さぞ恨んでるんだろうなぁ・・・
いや恨んでなんかはいないよ?本当だよ?恨んでなんかはいない!あのねぇ・・こないだこんなことがあったんだよ?学校で動物園連れてってもらったんだ・・
それで何を見て来た?ってこういう風に聞かれたからね、象や虎や熊や・・・ってそう言ったら、『象や虎は構わないけれども、熊はお前のおとっつあんの名前じゃないか、呼び捨てにする人がありますか』なんて、ふふっ・・・まんざらでもねぇや・・
なにを言ってやがる・・・そうか・・
そうだよぉ!恨んでなんかいないんだよ?よく雨なんて降るとね?表に遊びに行かれないからね、あたいがおっかさんの側にいて、お仕事の手伝いなんかしてるんだよ?
そういう時に色んな話してくれんだよ?こないだもね?おとっつあんとおっかさんの馴れ初めってのを聞いちゃった・・
つまらねえことを話してやがんだなぁ・・そうかぁ・・
おっかさんがお屋敷へ御奉公へ上がってたら、そこにおとっつあんが仕事に来てたんだってね?それで初めのうちに半襟だとか前掛けとか買ってくれて、まあ親切な人だなぁと思ってたら、そのうちにね、あのお屋敷の奥様から話があって・・
あの人は独り身で、職人として腕はいいし、気持ちの優しい人だからあの人と一緒になったらどうだ?って言われて、それで一緒になったんだってね?
半襟や前掛けが効いたね?
生意気なことを言うない・・そうかぁ・・まあ恨んでないってのを聞いただけでもおとっつあんほっとするよ・・本当にありがてえ話だ・・
それであたしたちをこんな風にしたのも、おとっつあんがやったんじゃない!ってんだ・・じゃあ誰がやったの?って聞いたら・・
お酒がそうさせたんだって・・だからお前さんも大きくなってお酒なんか飲むんじゃないよっておっかさんよくそう言ってるよ・・
あぁそうか・・そらぁそうだ・・酒なんざぁな、飲まなくてすむなら飲まねえほうがいいや!
だけどな?おとっつあんもその酒やめて、もう三年になるんだ・・今1人でもって、一生懸命仕事してんだ・・
え?ひ、1人で?酒やめちゃって1人で?あの吉原の女どうしたの?
・・・知ってたのかい!?
 

part4へ続く

 

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【子別れを聞きたい方へ】

 

 

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子別れ(上)

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