僕らと映画と落語と

どこにでもいる普通の大学生が普通から脱却するため、ブログ始めました。片方は映画、もう片方は落語についての記事を書きます!

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落語【子別れ上・下】part2

おうほら着いた!ここが大門だ!
俺ぁじいさんに聞いたところによるとな、こう屋根があってなそれで扉があって大層なもんだったんだらしいぜ!?潜り戸が今じゃ鉄の柱だよ鉄の柱!たいしたもんだよ!これつぶしたらいくらで買う?
そういう事いっちゃだめだよ・・商売が近づいてくるからそういうことを聞いちゃだめなの!
いやぁお前に聞きゃあ分かると思ったから聞いたんだよ!悪かった聞かないよ!
さっ!まあ中に入ろうじゃねえか!
ぐわぁっと中へ入って左っ手の方からひやかすのは上等と来てんだ、おう!そっち行ったってだめだよ!おめえなんて相手にしやぁしないんだから!
そっち行かねえでこっちだよ!おい!・・・紙ちゃ~~~~~~~~ん!!!
な~に!?紙ちゃんってのは?
名前が呼びにくいんだから・・ね?俺の傍から離れるんじゃないよ?三銭ばかりもってあっち行ったりこっち行ったりするない!ただ邪魔なやつになっちゃうんだから・・
なあこっちだこっち!
(吉原の店員)ちょいと!ちょいと!ちょいと大将!
な、なんだなんだい、なんだい!?
ええ・・ちょいといかがでございます?ちょいとご愉快を願いませんかな?
ご愉快?話によっちゃ願われてもいいよ?
なかなかたま揃いじゃねえか!
左様でございましょ?今みんなお風呂から上がってお化粧したばかりなんでございます!お手軽に願っておきますがいかがでございましょうな?
お手軽だぁ!?気に入らねえこと言ってくれたねぇおい!人のことを見くびるのか?おい!お手軽ってのはな~に?お手重に願いたいねお手重に!
それは大変な景気で・・
ああ景気だよ!?金がうなってんだよ懐で!紀伊国屋文左衛門が大門を占めたんなら俺も占めようじゃねえか!大門占められなきゃ裏の木戸かなんか占めてやらぁ!なぁ?こっちは金があるんだよ?こ、こいつだって金持ってるんだから!
なぁ!?
・・・うつむくなよ馬鹿野郎・・ないよりはあるんだよ!ないよりはあるんだぞぉ!?
なにもこっちは不正なことをして金をもってるんじゃねえやい!こっちは堅気の職人だい!神田建て大工長の熊五郎ってのは俺のこったい!そしてここにいるのは同町名の紙くず・・・同町名の紙だよ!
おめえ紙もってっか?あったら後で少しおくれ?どうも鼻水が出そうでしょうがねぇ・・こいつぁあれだよ同町名の紙・・紙問屋の旦那だよ!?なぁ!そうだろ?旦那!
あ、ああそうだよ!ははっ!
喜んでやがる・・・凄いんだよ?この家はぁ!もう色んな紙を扱うんだから!主にくずを扱うんだよ?しめて紙くず屋・・
よしなよ!
いいじゃねえか!言っちゃったもんはしょうがねえじゃねえか!紙くず屋で悪いかこの野郎?この人の家なんざ昨日今日できたばかりの紙くず屋じゃあねえぞ!?
先祖代々紙くず屋だぁ!
よしなってんだよ・・
いいじゃねえかぁ!
(吉原の店員)えぇ・・ばかにご機嫌でいらっしゃる・・
ご機嫌だよ?ちょいと弔いの帰り・・暗くてみっともねえかもしれねえけれども、おめえんとこはなにか?弔いの帰りじゃあ縁起が悪ぃからってんで、上げねえか?
いえいえ、そんなことはございませんけれども・・弔いの帰り、真に結構でございますなぁ、はかがゆくなんて言いますからねぇ・・
 

※はかが行く・・仕事の効率が上がる、はかどるという意味・・この場合は「墓」と掛けた

あっ!気に入った!えぇ?はかが・・・嬉しいなぁ!よし!俺ぁおめえの言うことが気に入ったからねえ!ひとつ褒美をとらせるから!手を出せ手を!
へ?何か下さるんですか?ありがとうございます・・・なんですか?
あぁ・・お赤飯・・あたくしお赤飯大好きなんでございますよ!
そうか!顔色が悪いからそれ食って少しは精をつけろ!
へえ!ありがとうございます!・・あの、なんだかしろ菜とがんもどきのつゆがないようでございますがな・・
ないんだよ・・元はあったんだ・・だから俺が背中にしょって歩いてたらこの野郎がど~んと上からどやしやがったんで、つゆがみんなだぁ~っと出ちゃってねぇ!つゆが今腹巻から俺のふんどしにかけてぐっしょり染みてんだよ・・
おめえどうしてもつゆが欲しいかぁ?欲しかったらそこへ出せ!ふんどし絞ってそこへかけてやる!
冗談言っちゃいけませんよ!!
 

なんてんで、酒を飲んでおもしろおかしく遊ぶ・・

遊ぶのは結構ですけれども度が過ぎてはいけないなんてことを申しますが・・

この熊公というのがたいへんに腕の立つ職人でございます・・

ところがこういうご職人というのはどっか癖がある・・

よく職人堅気なんてえことを言いますが、仕事が来る・・どうも気に入らない・・『御あし(お金)を積みますよ?』と言われても、『銭でこっちは動くんじゃねえんだい!』 なんてえことを言う・・

もう気に入るってと、わずかなお給金でも一生懸命仕事をするというようなそういう質の人が多い・・

大体が酒のみでもって、 それこそ飲む・打つ・使う三道楽揃っている人が多かったようそうで、酒なんか飲みながら・・

 
何言ってんだい!これぐらい飲んだって仕事くらいできらぁ!すんぷんたがわずやってやるよぉ!
 

なんてなことを言う・・

若いうちは確かにそういうことが出来るんですな・・

昔のお職人さんなんかでいた、私どもが知ってる中では例えばお寿司屋さんのご職人さんかなんかで酒の好きな職人さんが今すよ・・

そうするってと湯呑の中に酒を入れておいて、そいつを飲みながらよく仕事をしている人がいますが、もうそういう人は、それがもう半分売り物みたいになってますから、それでも包丁さばきから握り方、きっと間違いなくできる・・・

これはある程度の年までで、そっから先いくってと、やっぱり酒に体が、何というんでしょうか・・

おかされてくるというか、神経が鈍ってくるというか、寸法間違いをしたりなんかするなんということもでてくるようで・・

 
何言いやがんでい!酒なんざ飲んでたってできらぁ!
 

なんてんで、やってみる・・

やらせてみると、しらふの人からするとどうも良くない・・

酔っ払ってるからこれでいいだろうなんという・・・

だんだんだんだん人間が無精になるということがありますな・・

それに飲む・打つ・買うというのはみんな繋がっておりますから、飲んだ勢いでもって人に誘われてちょいといたずら(博打)をしてみる・・

少し金が入るってと行こうじゃねえか!繰り込もう!ってんで吉原へ入っちゃったりなんかする・・そうなるってともう仕事はしません・・

 
何言ってやがんでい!仕事なんざ出来なくたってな?こっちはやろうとすりゃあ後からいくらでもふるほど来るんだから心配するない!
 

なんということを言いながら家の物を持ち出して質に入れて、それでもって酒を飲んで遊びに行っちゃう・・・

これの繰り返しでございます・・

それで、その時上がったご婦人が大変に気に入って、また向こうも商売上手ですから色んなことをいう・・

家にいるってと、かみさんはがみがみ言う・・そらぁ当り前です・・金をまるでいれないんですから・・

 
どうするんだよ!本当にもう!借金だらけなんだからさ!お前さん!仕事をしておくれよ本当に!なんにもなくなっちゃってんだよ?どうすんだよぉ!
うるせえなぁ!本当に・・帰ってくりゃあそんなことばかり言ってんだから!もういいよぉ!こんな所にいられねえや!
 

なんてんでぱぁ~っと飛び出してってまたどっかでちょいと金を借りたりなんかして・・仲(吉原)へ入って行って・・

 
また来たでぇ!
まあ・・よく来てくれたねぇ・・嬉しいねえ・・どうしたんだいお前さんここんところ随分やけになってるじゃないか・・疲れてるようだよぉ?
気を付けておくれよ?お前さんにもしものことがあったら大変なんだから・・
 

なんてなことを言ってくれるってと『ああ・・女房よりもこっちの方がいいなぁ・・』なんてこうなっちゃう・・

ついうっかりそういう料簡になってくるというのは、やはり酒のせいもあるかもしれませんが、どこをどうとちくるったんでしょうか、この熊公が大事な女房子を追い出しちゃって、この吉原のめかけの女を家に入れた・・

手に取るのは、『やはり野に置け蓮華草』なんてえことを言います、やっぱりああいう所にいるときにはきちんと寸法にあってる・・もう余裕があるんですな・・・

だから『お前さん嬉しいよぉ』とか色んな優しいことすぅっと言ってくれて、ちやほやしてくれる・・

ところがいざ堅気の家に入るってやることが一杯ありますよ・・・

朝早く起きて掃除洗濯をしなきゃならない・・おまんまも炊かなきゃならない・・亭主の面倒も見なきゃなんない・・夜帰ってくるまで掃除や洗濯・・

もう色んなことをやって、また晩飯の支度をして待ってなきゃいけないというのが、長いことそういうことをしない暮らしをしておりますから、そう言うことがとってもつらい・・・

朝早く起きることがとっても嫌ですから、朝になっても起きてこない・・

 
おい!起きなよ!
う・・う~ん・・もうなんだよぉ・・もうぉなにさぁ・・もう~朝になると人のことを起こすねぇ・・
当たり前だよ!しょうがねえじゃねえか!俺これから仕事行くんだい!
行っといでよだからさぁ!
行っといでじゃねえよ!俺ぁ腹が減っちゃうんだよ!だから飯食わしておくれよ!
う~ん・・おまんまなんていちいち食べなくたっていいじゃないかぁ・・もう~やだねぇ・・こんなことだったらタケさんとこに嫁に行った方がよかった・・
 

なんということをいう・・

しょうがないから空きっ腹かかえて仕事場へ行って、帰って来るってと何にもしていない・・

昼間っから酒飲んで方々うろうろうろうろしている・・

はぁ~たいへんな女と一緒になっちゃった、どうしよう?と思ってるってと、女の方から『とてもこんなところには馬鹿馬鹿しくて居られないよ』ってんで出て行っちゃった・・

さあ1人になって始めて気が付いた・・

『あぁ馬鹿なことをしたもんだ・・』・・

もうそれから酒のせいだというんで、気が付いてピタッと酒をやめて、一生懸命仕事をするってと元々腕のいい人ですから、腕が戻ってくる・・

そうするってとまた頼んでみようってんで、頼む・・

その出来栄えが真によろしゅうございますから・・

見ねえな!あの欄間のところ!熊公がやったんだ!いい仕事をするねえやっぱり!あいつでなくちゃいけねえや!
 

なんということでもってまた仕事がどんどんどんどん来る・・・

今まではあれは嫌だこれは嫌だなんてそんなことを言ってたのが、仕事の選り好みを致しませんで、来た仕事をどんどんどんどん請け負ってやってますから、もう遊んだりするようなことはございませんで、お金がどんどん貯まってまいりますな・・

大変な勢いでございまして・・

こんちわ!親方いるかい?
へい!おぉ!これはこれは!なんですな番頭さんじゃありませんか!こんなむさ苦しい所へ・・いやぁ御用がお有りでしたら手紙をよこしていただきましたら、こっちから伺いましたのに・・
いやいやちょいと用もあったんで、ついでと言っちゃなんだが・・今いいかい?ちょいと話を・・
そらぁ構いませんよ、ちょいと今道具改めてたんだ、新しいのがきたもんで、どうぞどうぞ!お座布団をおあてになっておかけになって・・
えぇ・・一体なんでございましょう?
いやぁほら例のね?うちのご隠居が茶室が欲しいなんて言ってたろ?で、あたしはあん時の話しっぷりじゃ先のことかと思ってたんだ・・
そしたらどっかで見て来たのかねぇ・・・急に欲しくなっちゃったんだろうねぇ・・『すぐにもかかってもらいたい、親方の所へ行って都合を聞いてきてくれ』ってこういうんだよ・・
いやぁ今忙しいからすぐにってわけにはいかないかもしれませんよ?って言ったら『余計なことを言うんじゃないよ?とにかく行って聞いてきておくれ!』ってんだ・・もうしょうがない・・それであたしが伺ったとこういうわけなんだけど・・
どう?すぐにはちょいとかかれないだろう?
 
 
part3へ続く
 
 
 

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【子別れを聞きたい方へ】

 

 

 

子別れ

子別れ

  • 春風亭 一之輔
  • ヴォーカル
  • provided courtesy of iTunes

 

 

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