こんにちは。
ぁゃゃです。
今回は、とある高校の卒業式を舞台にした短編群像劇
少女は卒業しない
を紹介します!
【スポンサーリンク】
①小説情報とあらすじ
小説情報
少女は卒業しない
著者:朝井リョウ
初版発行:2012年3月
発行所:集英社
あらすじ
今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして胸に詰まったままのこの想いとー。
別の高校との合併で、翌日には後者が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
②それぞれのあらすじと見どころ(ネタバレなし)
今回は短編全7つのうち、「エンドロールが始まる」「屋上は青」「在校生代表」「寺田の足の甲はキャベツ」を紹介します。
エンドロールが始まる
あらすじ
図書館の優しい先生に思いを伝えられないまま、卒業式を迎えてしまった作田。
卒業式の朝、作田は最後の図書返却をしに、図書館へ向かう。
卒業式の日は、卒業生(特に女子)はいつもよりお洒落をしてきたりしますよね。主人公作田も、いつもより早起きしてお洒落をします。その準備支度や登校にちりばめられた風景描写や心理描写のひとつひとつが瑞々しく美しい作品です!男の僕でも「あぁ~卒業式の朝ってこんな感じだな」と思わず共感してしまいました。
女子高生の作田にとって卒業式とは、頭髪検査やカラー、パーマ禁止から解放される日であると同時に、ひそかに想いを寄せる図書館の先生への最後の図書返却の日でもあります。
卒業式とは、高校生活のエンドロールです。エンドロールを迎えるために、作田が行ったこととは。
甘酸っぱく切ない作品です。
屋上は青
あらすじ
夢を追って学校を辞めた尚輝と、その幼馴染で真面目な孝子。
卒業式の朝、孝子は尚輝に立ち入り禁止の屋上へ呼び出され、生まれて初めてのサボりをする。
まず屋上ってのがいいですよね。立ち入り禁止エリアでありながらも、高校生の青春には欠かせない場所のような気がしてしまいます。そんな屋上、美しい空の下で孝子は生まれて初めてのサボりをします。
孝子は成績優秀で、学級委員を務めています。しかし、彼女の根底にあるのは「真面目でいなくちゃいけない」という誰がかけたわけでもないけれど、確かに顕在するプレッシャーでした。一方、尚輝は校則を破って髪を染めたり、夢のためなら退学も厭わない自由奔放な性格です。
正反対の性格の二人が卒業式の朝、優しく鳴り響くチャイムの音の中で話したこととは。
立ち入り禁止の屋上なのに、サボりなのに、それでも青々しく美しい作品です。
【スポンサーリンク】
在校生代表
あらすじ
女子バスケ部のエースで生徒会にも属する2年生の亜弓が、卒業する3年生に贈った送辞。その送辞の中で、同じ生徒会で憧れの田所先輩へある告白をする。
この作品は、全編が亜弓の読み上げる送辞です。この斬新なアイディアと、亜弓のユーモアたっぷりで、でも甘酸っぱい文章が魅力です。この送辞を通して、読者は高校の行事や主要人物を知ることになります。
亜弓はこの送辞で、同じ生徒会で想いを寄せる田所先輩へとある告白をします。全校生徒が聞き、しかも卒業生と在校生の最後の交流である送辞で、そんな個人に向けた内容を話して許されるのか、というお話は置いといて。こんな送辞を読む生徒会がいたら思い出深い卒業式になることは間違いないですね(取り壊しが決まり、最後の卒業式だからこそかもしれません)。
思わず高校生を羨んでしまう作品です。
寺田の足の甲はキャベツ
あらすじ
卒業式が終わった後の体育館でよせがきを書く部活生徒たち。
女バス部長の後藤と、その彼氏で男バスの寺田。部内公認カップルの彼らは、ある決断をする。
自分が高校時代バスケ部だったこともあって、印象に残っている作品です(ただし僕には女バスの彼女なんていませんでしたけどトホホ)。卒業式の朝も清々しくて美しいですが、卒業式後の昼下がりもこれまた温かくて美しいですよね。
卒業アルバムのよせがき、卒業生と在校生のおふざけ、まだまだ寒いけど少しずつ温かくなっていく春の景色、そこから連想する新たな未来。それら全ての描写が完璧!ひとつひとつの文章に込められた、卒業したての高校生が書いたの?と思うほどのリアリティにきっとあなたも共感するはずです。
部活の仲間の気遣いもあって、二人きりになれた後藤と寺田。卒業、そして新たな道を前にして、彼らはどんな決断をするのか。
美しく、瑞々しいリアリティ溢れる作品です。
(Part2に続く)
【スポンサーリンク】